私たちの生活は光合成によって作られた有機物(食物)、酸素、エネルギー(石炭や石油といった化石燃料も、もとは光合成が作り出した有機物)に支えられています。
当研究室では微生物や植物を材料に、光合成に関する基礎研究と応用研究を行っています。
井上和仁研究室
(植物生化学研究室)
光合成システムの誕生と進化
酸素を作り出す光合成は現在のシアノバクテリアの祖先が27億年前に始めたと考えられています。シアノバクテリアは非常に複雑な光合成システムを持ち、効率良く光エネルギーを利用しています。このような複雑なシステムがどのようにして進化してきたのか解き明かすために、シアノバクテリアより単純なシステムを持つ光合成細菌を材料に、地球最初の光合成生物の姿とシアノバクテリアの誕生過程を明らかにするための研究を行っています。
研究に使っている光合成細菌の中には、温泉、酸性/アルカリ性湖、高塩水湖、土壌、海洋、深海、氷雪など様々な環境から単離されたものがいます。これらの細菌の中には、特殊な能力を持っていたり、珍しい物質を作ったりするものが少なくなく、光合成の研究から思わぬ応用研究の芽が広がっていきます。
光合成を利用した水素生産
石油などの化石燃料の利用は、温室効果、大気汚染、酸性雨などの深刻な環境問題の原因となっています。そのため近年、化石燃料に取って代わる再生可能でクリーンなエネルギー資源として、水素が注目されています。当研究室では、光合成微生物であるシアノバクテリアを遺伝子工学的に改良し、水素発生効率を世界最高水準に高めることに成功しました。
今後、この研究成果をもとにして、光合成を利用したクリーンで再生可能な光生物学的水素生産の技術開発を目指します。