薬剤分解酵素の分子進化に関する研究、酵素機能の制御機構

1. 薬剤分解酵素の分子進化

β-ラクタム剤は細菌の細胞壁合成酵素を阻害することで細菌の生育を阻害する薬剤で、感染症治療薬として多用されています。しかし、一部の細菌は薬剤分解酵素の遺伝子を獲得し、この酵素の働きで薬剤を分解することで薬剤存在下でも生育可能となります。このような細菌は薬剤耐性菌と呼ばれ、臨床において大きな問題となっています。
現在までに新規薬剤が次々と開発・使用されていますが、新規薬剤の使用に伴い、細菌の酵素が変異(分子進化)し、さらに強力な薬剤耐性を獲得した細菌の出現が続いています。本研究室では、変異が酵素の性質に与える影響を解析することで、薬剤使用に伴う分子進化の方向性の解明を目指しています。

2. 細胞内における酵素機能の制御機構

細胞内には様々な物質が存在し、酵素の活性を制御している可能性があります。我々は乳酸菌由来の酵素アラニンラセマーゼの立体構造・機能を解析し、有機酸がこの酵素の活性に大きな影響を及ぼすことを明らかにしました。現在は、有機酸による酵素活性の制御機構の詳細を明らかにすること、また、乳酸菌におけるこのような制御の意義を解明することを目指しています。